氷の車体と氷のタイヤで走る探査車「IceBot」 極地、惑星、衛星での活躍を想定Innovative Tech
米ペンシルベニア大学の研究チームが開発した「IceBot」は、氷を車体とした二輪ローバー(探査車)だ。氷と電子機器を接合し、モーターで氷のタイヤを駆動させる。氷点下でも動作し、氷モジュールの着脱は容易で、修復や再構成を得意とする。
この氷ローバーが得意な環境は、人間の活動が困難な寒冷環境(南極、北極、月、惑星など)だろう。しかし、このような遠隔地や地球外環境の場合、材料を現地に輸送するのにコストがかかる。そのため、あらかじめ圧縮したものを現地で膨らませる、現地の材料で構築するなど多様な解決法が今まで提案されてきた。
今回は現地でも手に入れやすい場合が多い氷に着目し、氷を主要なパーツとして活用した二輪ローバーを開発した。
氷ローバーは、氷以外のコンポーネント(アクチュエーターやバッテリー、その他電子部品)と、加工した氷モジュール(タイヤ2個と本体1個)を接合して組み立てる。氷のタイヤと本体の接合は、アクチュエーターを挿入し繋げる。アクチュエーターを挿入するための氷の穴は、ドリルで開ける。
設計上の注意事項は、電子機器の熱によって溶けた水で自らをショートさせないこと。そのために電子機器を氷の上に配置し、氷と直接接触しないよう、間にブレッドボードなどを用いる。
プロトタイプは、北極探査用を想定して作成した。重量は約6.3kg。最大2.5度の斜面を登り、前方に取り付けた氷のガードで簡単な障害物を排除しながら進む。平均マイナス17.4度の冷凍庫内の氷上で走行テストを行い、北極の環境での動作を無事クリアした。
ローバーは修復を得意としている。アクチュエーターや電子機器の故障は取り替えが必要だが、氷モジュールの交換は新しく形成した氷を再配置するだけで補える。
将来的にはロボットアームを取り付け、探索中に自己修復させたいという。例えば、ローバーがひび割れを認識した場合、ロボットアームでひび割れに水を当て凍らせて修復するといったことを計画している。