「オールシーズンタイヤ」ってどうなの?…ネクセンタイヤの実力
特集記事 コラム
◆そもそもオールシーズンタイヤって?
レスポンスでは、これまでもネクセンタイヤのインプレッションはお届けして来たが、今一度「ネクセン」というタイヤブランドについておさらいしたい。
韓国に拠点を構え、前身にあたるフンアゴム工業から数えて77年の歴史を持つタイヤメーカーだ。昨今はポルシェをはじめフォルクスワーゲンやルノー、そしてスズキや三菱などの日本の自動車メーカーからも純正指定を受けるなど、技術力を認められている。
そんなネクセンの日本における主力商品のひとつが、オールシーズンタイヤ。オールシーズンタイヤとは近年注目されているタイヤのカテゴリーで、夏タイヤのようなドライ路面(舗装路面)における走りのしっかり感を備えつつ、雪道でも走行可能なタイヤのこと。凍結路面は得意ではないので冬になると日常的に凍る道路環境の人にはオススメできないが、「ときどき雪道を走る」という程度の人なら1年中履きっぱなしで済むのが特徴である。
これまでは、雪道を走る人なら冬の始まりと終わりに夏タイヤとスタッドレスタイヤの履き替え作業をするのが常識だった。しかしオールシーズンタイヤは、それを不要とする、便利なタイヤだ。
オールシーズンタイヤの秘密は、トレッドパターンとゴムの構造にある。たとえばネクセンのオールシーズンタイヤ『Nブルー 4シーズン(N'blue 4Season)』の場合、V字型トレッドパターンが雪を引っ掻いて前へ前へとしっかりと進むトラクションを稼ぐほか、低温域でもしなやかさを失わないゴムがしっかりと路面を捉える。タイヤテクノロジーの向上が、オールラウンド性能を高めている。
オールシーズンタイヤに関しては、レスポンスをはじめとする各メディアでもプロのドライバーや自動車評論家によるインプレッションを読むことができる。しかし今回は、あえて一般的なドライバーの視点からチェックすることにした。ドライバーは東京在住で、日常的にクルマを使う他、年に数回はウインタースポーツを楽しむために雪道も運転するという堀江美帆さん。クルマは日産『セレナ』の「e POWER(eパワー)」で、タイヤはネクセンのオールシーズン『Nブルー 4シーズン』だ。
ドライブコースはドライ路面の関東をスタートし、高速道路を北上して東北へ。そこで道での走りを確認してみた。ここからは、堀江さんの試乗コメントともに『Nブルー 4シーズン』のフィーリングを紹介しよう。
◆夏タイヤと遜色なし!抜群のフィーリングと快適性
まずは市街地から。クルマの運転が好きというだけあって慣れた操作で走りはじめた堀江さんだが、「夏タイヤとの違いはわからない」というのが正直な印象だという。ドライ路面におけるフィーリング向上は昨今のスタッドレスタイヤのトレンドのひとつだが、とはいえスタッドレスタイヤでドライ路面を走るとタイヤと路面の間に柔らかいゴムボールを挟んだかのようにグニャリとした感覚が生じるのは否めない。
しかし、一般的なオールシーズンタイヤと同様にネクセンの『Nブルー 4シーズン』ならそういった手ごたえの頼りなさとは無縁だ。加減速、そしてハンドルを切った際の車両の反応はまるで夏タイヤのような芯のある挙動で、夏タイヤと同様の感覚で気持ちよく走ることができる。
「スタッドレスとは明らかに違いますね」(堀江さん)
クルマは高速道路へ。スタッドレスタイヤがもっとも苦手とするのが、舗装路面の高速域だ。スタッドレスタイヤは、夏タイヤではグリップしない凍結路面でしっかり走るためにゴムの質を柔らかくしている。そのためフワフワとしたハンドルの手ごたえや挙動を生むのだ。車線変更時など曲がる際のふらつきも感じやすい。果たして、舗装路面におけるオールシーズンタイヤの印象はどうだろうか?
「しっかりしているのがわかります。(スタッドレスタイヤのように)フワっとするのではなく、タイヤが地面にちゃんとくっついている感じですね」
「実際に運転していて『夏タイヤを履いている』と言われたら素直に納得ですよ。逆に『スタッドレスタイヤを履いている』といわれたら、『えっ、違う!』と思う」
高速道路でも市街地の舗装路と同じで、夏タイヤのような、スタッドレスタイヤとは異なる印象だという。速度域が高まっても舗装路面でのしっかり感があり、安心につながるのがオールシーズンタイヤの特徴なのだ。
高速走行時の車線変更や加速はどうだろうか?
「ハンドルの修正が必要ないですね。スタッドレスは(左右に)振られちゃうことがある。だけどこのタイヤはそういうのも全くなく、冬タイヤとはぜんぜん違います。感動しました」
乗り心地や静粛性も気になるところだが……。
「乗り心地は抜群です。スタッドレスは「ゴーッ」っていう音がしますが、オールシーズンは音も気にならないですね。(夏タイヤと同じように)静かです。とても快適ですよ」
すっかりご満悦の様子だ。
◆雪道でも安心!優れたグリップパフォーマンス
夏タイヤと変わらない舗装路面でのしっかり感を十分に感じたところで、クルマは雪道へ。雪道でも走れる性能を備えているか否かは、オールシーズンタイヤに関してもっとも気になる部分だ。堀江さんも「舗装路面では夏タイヤと変わらない感覚だったから、雪道は厳しいかもしれない…」と不安を隠せない。
しかし、雪道におけるグリップはそんな堀江さんの想像を超えるものだった。路面を白くする程度の薄い積雪はもちろん、タイヤが埋まるほど深く積もった雪でもしっかりと前へ進んでいく。
「滑る感じがない。タイヤが雪をかいてくれている感じがしますね。(オールシーズンと聞いて)雪の上を走る前は不安だったのですが、安心できます。これなら雪道でも、スタッドレスに近い感じで走れますね。」
と堀江さんも驚いている。
その印象は除雪をしていない雪の深い場所を走っても変わらないどころか、ますます強まったようだ。
「積もっていても、しっかり雪を掴んでいる感じ。急ブレーキ踏んでもちゃんと止まります。すごい!」
実は、オールシーズンタイヤと言ってもその特性はさまざま。夏タイヤにきわめて近い味付けで気持ち程度に雪の上を走れる商品もあれば、しっかりと雪の路面を走れるように考え、雪上でのグリップについての検証を受けたうえで欧州規格に基づく「スノーフレーク」と呼ばれる冬タイヤの認証を受けた製品である。スノーフレークマークがついていれば、積雪した日本の道路で冬用タイヤ規制にもスタッドレスタイヤと同じようにチェーン装着なしで通行することが可能だ。
ネクセンのオールシーズンタイヤ『Nブルー 4シーズン』は後者の雪道でもしっかり走れるタイプのオールシーズンタイヤで、そのなかでも特にウインター性能を重視している。スタッドレスタイヤ寄りの味付けなのだ。舗装路面では夏タイヤ同様のしっかり感を持ち、静粛性などのデメリットもなく、雪道では積もった雪の上でも安心して走ることを可能にする。
冒頭に書いたように、オールシーズンタイヤは凍結路面を得意としない(とはいえ夏タイヤに比べるとグリップレベルは大幅に上がる)から日常的に路面が凍る環境には不向き(スタッドレスタイヤをオススメする)だが、年に数回だけ雪道を走るような使い方にはジャストフィットと言えるだろう。
1年中履きっぱなしでいられるから、タイヤ交換作業や保管場所の心配する必要がないのも魅力的だ。特に東京近郊や名古屋、大阪などあまり雪が降らない都市圏のユーザーは特にマッチングがよく、検討する価値がある商品だ。