実は「手榴弾」並みの恐ろしさ…空気充填中のタイヤ破裂事故「年1回発生」の衝撃事実
関西の議論2015.3.16 15:00
滋賀県甲賀市のガソリンスタンドで昨年末、空気を入れていた大型トラックのタイヤが突然破裂し、作業をしていた店員が風圧で死亡する痛ましい事故が起きた。まさかと思われるかもしれないが、実は空気充填(じゅうてん)中のタイヤ破裂は過去5年間で少なくとも5件は発生し、3人が死亡する非常に危険な事故だ。特に大型車のタイヤが破裂した場合は「手榴弾(しゅりゅうだん)並みの恐ろしさがある」と指摘する関係者もいるほど。扱いを一歩間違えればとんでもない“凶器”になりかねない「タイヤ」とどう付き合っていけばいいのか-。(和野康宏)
強い風圧で2メートルも飛ばされて…
「ドーン!」
昨年12月22日夕、甲賀市水口町の国道1号沿いにあるガソリンスタンドで大きな音が響き渡った。副店長を務める男性従業員=当時(49)=が大型トラックのタイヤ(直径80センチ)に空気を入れる作業をしていたところ、突然、破裂した音だった。
異常事態に気付いた別の従業員が駆けつけると、男性従業員は作業をしていた場所から2メートルも後方に飛ばされあおむけに倒れていた。男性従業員はすぐに病院へ運ばれたが、死亡が確認された。死因は、胸に強い風圧を受けたことによる大動脈解離だった。
滋賀県警甲賀署によると、破裂したタイヤは側面全体に細かな亀裂がたくさんあり、タイヤの強度が下がっている状態だった。そこへ、高圧の空気を補充したため、破裂が起こったとみられる。
「予見可能性」あるといえず摘発断念
死亡した男性従業員はガソリンスタンド勤務歴28年のベテラン。労働安全衛生法に基づく規則で、事業者は自動車タイヤの空気充填業務に従事する従業員に対して講習などの「特別教育」を行うよう義務づけられており、この男性も平成20年5月に受講していた。
ガソリンスタンドを経営する会社は「当社の店舗でタイヤの破裂事故が起きたのは初めてのケース。恐ろしさは十分に認識しており、注意するよう呼びかけていたにもかかわらず起こってしまい残念」と話す。
捜査に当たった甲賀署は「ガソリンスタンドの敷地内は道路上ではないため、大型トラックの運転手も、運転手の会社も、道路交通法(整備不良)に問うのは困難」と指摘する。同署は労働災害で死亡した男性従業員の雇用主に対する業務上過失致死罪の適用も検討したが、「男性がベテランで、労働安全衛生法に基づく講習も受けている。会社側に予見可能性があるといえず断念した」と話す。
破裂事故は年1回ペースで、死亡率も高い
国内のタイヤメーカーでつくる「日本自動車タイヤ協会」によると、空気充填作業中のタイヤ破裂事故は、「補充」作業に限ったデータでみると平成22~26年の5年間で5件発生している。実に年1回は起きている計算だ。このうち人身事故は4件で、3人が死亡している。
平成22年1月、山形県河北町の建設会社で、除雪作業の準備のため従業員ら3人が除雪作業車のタイヤ(直径1・4メートル)に空気を入れていたところ、タイヤが破裂。男性1人が胸に風圧を受けて間もなく死亡。別の男性も胸に軽傷を負う惨事になった。
同年11月には、北海道室蘭市の運送会社でも、トレーラーのタイヤ(直径90センチ)が空気充填中に破裂し、作業をしていた男性運転手が強い風圧を受けて胸の出血性ショックで死亡した。
また、補充中ではなくタイヤ組み替え時の充填作業だったため、前出のデータにはカウントされていないが、25年4月にはさいたま市北区の陸上自衛隊大宮駐屯地でもパンクによる死傷事故が起きている。隊員2人が大型トラックの整備をしていた際、新たに組み替えたタイヤ(直径1・2メートル)に空気を充填していたところ、タイヤが破裂して風圧が2人を直撃。女性隊員が死亡し、男性隊員が重傷を負っている。
ある運送会社の関係者は「大型車のタイヤになると非常に高圧で、破裂すると風圧も強烈。手榴弾に匹敵するほどだ」と話す。
ゴムは劣化する…目視だけでは難しい
いったい、タイヤ破裂事故を防ぐにはどうすればいいのか-。
日本自動車タイヤ協会技術部の柴田浩幸さんによると、タイヤが破裂するのは、タイヤの劣化や損傷が大きな原因にあげられる。タイヤはゴムだけでなく、ワイヤーや繊維などが組み合わされた複雑な構造を持つ。「低圧状態で走行を続けていると、タイヤ内部の『骨格部分』がダメージを受け、高圧の空気を充填した際に傷を受けた部分が耐えきれずに破裂する」と解説する。
それだけに、走行前にタイヤのチェックは欠かせない。「まずは目視。タイヤの接地面がへこんでいたり、タイヤの側面に傷があれば要注意。ただ、目視だけでは異常が確認できないケースも多い」という。
そのため、月1回はタイヤ内の空気圧を点検する必要がある。タイヤのバルブにエアコンプレッサーの注入口を差し込んで計測する。通常は高くて乗用車で280キロパスカル、トラックの場合は800~900キロパスカルで、「半分以下になっていたら非常に危険な状態。そんな場合は空気を入れずにタイヤ販売店に相談してほしい」と話している。
また、タイヤのすり減り具合に注意を払うのは当然のことだが、ゴムは時間とともに劣化していく素材。各メーカーとも、たとえ走行距離が多くなくても使用開始後5年が過ぎたら定期的にタイヤを点検し、10年以上は使用しないよう呼びかけている。
普段はあまり気にしないタイヤだが、一度、クルマの“足元”を見つめ直してみては-。
またしてもタイヤバースト事故での死亡者
毎年必ず1人は出るのに政府は何の対応もしない…
防護柵に入れて空気の充填をと、言ってるが何の規制もチェックも無いから柵を導入していない業者もある今一度政府やタイヤ協会も考えて頂きたい!!!!!